ニュースレター第68号巻頭言

比較文明学会の新3カ年計画 原田憲一

2021/03/10 19:38
広報委員(宮嶋)

 この度、松本亮三さんのあとを継いで3年間会長を引き受けることになりました。 

 私は、もともと地学分野の人間で、大学院時代は海洋地質学特に渦鞭毛藻化石を用いた古海洋環境の復元や深海産マンガン団塊の成因を研究していました。1980年、初めて定職に就いた山形大学理学部地球科学科で大町北一郎教授から「資源科学」の考え方を学んだことから、資源と技術の関係に興味をもちました。そして伊東俊太郎著『比較文明』(東京大学出版.会)に触発されて、文明圏における各種資源の有無や賦存状況から技術発展の特徴を探る研究を手探りで始めたところ、研究を進めれば進めるほど専門分野の仲間から異端視されて、成果発表の場がなくなりました。そんな時に出会ったのが比較文明学会でした。「一.もっとも総合的な学的認識、一.超領域的な知的営為、一.創造的精神、一.地球文明的視座に立つ理論的実践、一.開かれた学会」という設立主旨に賛同して、即座に入会しました。その年の年大会(京都)で講演したところ、当時の伊東会長をはじめ吉澤五郎・神川正彦・染谷臣道・杉田繁治さんらの重鎮からも温かく受け入れていただきました。講演会での白熱した議論や懇親の場でのアカデミックな雑談がなければ、私の比較文明学的研究は素人談義の域を超えることはなかっただろうと、幸運な出会いに感謝しています。ところで、2011年3月11日の「原発震災」に際して、本学会の梅原猛顧問は「これは文明災だ」と喝破されました。確かに、原発や核兵器だけにとどまらず、人工知能搭載のロボット兵器やナノ兵器の実用化、サイバー攻撃や遺伝子操作の簡易化など、現代文明を根底から揺るがせる技術が急激に進展しています。また、先進国の少子高齢化と発展途上国の人口爆発には一向に歯止めがかからず、将来世代の存続を脅かす資源洞渇と環境破壊は深刻さを増す一方です。そうした構造的な矛盾は、世界各地で、地域紛争や無差別テロという形で噴出しています。 

 今こそ、輝かしい設立主旨をもつ本学会の出番だと声を大にして言いたいところですが、残念なことに、会員数は減少しています。しかし、それは、決して、社会から「なくても困らない」と思われたからではないはずです。根本的な問題は、学会設立当時の重鎮が引退されていく一方で、若手研究者の加入が少ないからだと分析した新執行部は、以下の3つの目標を掲げました。(1)本学会の存在意義を広く発信して会員数の増加(総員で500名以上)を図り、学会員の構成を、若手(学生や外国人留学生を含むchallenger)・社会人(communicator)・中堅(manager)・シニア(supervisor)というレヴェルで多様化させて、(2)比較文明論を展開すると同時に比較文明学の学術的方法を確立する。そして(3)若手研究者を育成する、です。 

 目標(1)達成のための方策としては、?『比較文明』が若千研究者にも魅力的な雑誌になるように編集方針を変更したり、支部の拡大や活動強化を図ったりして、本学会に加入するメリットをアピールする。?社会人には、非会員も加えた公開シンポジウムを開催したり入門書や普及書を発刊したりして、本学会が、より良い社会と平和な世界の創出を目的とした、社会に開かれた組織であることを発信する。?研究者に対しては、関連した学会と合同例会を開催して学会の存在をアピールしたり、会員が代表研究者となる科研費に非会員を加えたり、国内諸学会の会長・副会長クラスに加入を呼びかけたりすること、などを考えています。 

 目標(2)を達成するためには、?歴代の会長や名誉理事などのご協力を得て『比較文明学会40年史』を編纂する。?中堅・若手研究者が主体となって「比較文明学史研究プロジェクト」を立ち上げ、科研費や民間団体の助成を得て研究を推進する。?シニア会員にインタビューして、学会設立当時の活動の動向および本人の比較文明学・論に対する想いを聞き出して記録することなどを企画しています。 

 目標(3)の達成のためには、?編集委員会や研究企画委員会に若手学会員を加えて、若手学会員が活躍できる場を拡大する。?民間団体が提供する、特に若手研究者を対象にした各種の助成金や奨励金などに積極的に申請するように奨励し、申請に必要なキャリアの作り方や申請書の書き方などを指導することなどです。このうち?については、先の役員会で、各種委員会の構成を決める際、若手会員を優先しました。?についても学会HPを通じて情報提供を始めたところです。 

 本計画を3年間で達成するには、学会員の理解と賛同と協働が大前提となりますが、インターネットなどのITの活用も不可欠です。限られた予算とマンパワーのなかで、どのような交流の場や発信の仕組みをいかにして作ればよいのか、「開かれた学会」として、会員からの積極的な提案を歓迎します。 

 学会を活性化して、より良い社会と平和な世界を創出しましょう。 

                                                              (至誠館大学)